みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第33話

デスクの側、番のい引きしを取りしてみると、その奥のデッドスペースに、差し込み式のいベニヤ板で隠された底がしていたのだ。 板をすと、暗がりのに、もう冊の黒い学ノートがひっそりと横たわっていた。 冊目のノートだった。

表を撫でると、乾いた埃の向こうから、父のあの跡が浮かびがった。 『この病院を、この先どうするか』 俺は息を呑み、胸の鼓が鳴るのをじながら、そのノートをいた。

最初のページに記されていた付は、今からのだった。 父がの病棟をへと削減した、まさにその期だった。 そこにかれていた内容は、それまでの冊の患者メモとは完全に異なっていた。 徹な、容赦のない統計数字と経営分析の羅列だった。

過の入院患者数の推移、齢層の内訳、夜勤に従事できる護師の齢構成と今の定退職者数の予測、柏町の態推計と歳以の齢化率の推移、さらには隣の町に設が予定されている規模総病院の病数と競響――。 膨なデータ分析の末尾に、父の震えるような力い字で、こう記されていた。

『この病院は、あとで入院病棟の運営を維持できなくなる。 護師の絶対数が決定にする。

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員がりないにもかかわらず、見栄や過の栄のために病をけ続けることは、医療事故を誘発し、患者を危険に晒す犯罪為である。 ……この病院を畳んではならない。形を変えるのだ』

ページをめくると、そこに描かれていたのは、息を呑むほど綿密な「病院再のグランドデザイン」だった。

『入院病棟を完全に廃止し、ベッドを持たない無診療所へと組織を転換する。 来診療は午をに継続する。 そして、腰がたなくなり病院へ通えなくなった患者の元へは、こちらから向く。 ――「訪問診療」と「訪問護」を、この病院のたな背骨とする』

父の跡は、さらに具体な業務計画へと踏み込んでいた。 『急変や度な術が必な急性期の治療は、包括連携協定を結んで県央病院に委ねる。 急性期の治療を終えて容態が定した患者は、すべてこの町へ連れ戻し、自宅で最期まで取る。 そのために必な員体制は―― 常勤医師名、訪問および来護師から名、医療事務名。 これ以の員はであり、これ以の数では現が回らない』

ノートには、過の借入の返済猶予の交渉順、残すべき医療器の選別、さらには将来に訪問診療の対象となるであろう約名の齢患者のリストまで、すでに克にリストアップされていた。

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歩能が衰え始めている者、族によるでの送迎が限界に達している者、特別養護老ホームに入所したものの肺炎を繰り返している者――患者ひとりの名の横に、現直面している活の困窮が記されていた。 さらに、隣の訪問護ステーションとの連携計画まで記され、そこには「さん」という護管理者の名が具体に挙げられていた。

俺はページをめくる指を震わせた。 父は、衰えゆく体力に負けて病院を縮していたのではなかったのだ。 先のこの町の過疎化と超齢化の未来を徹に見据え、自分がきているうちに、痛みを伴う術を自らので断していたのだ。

そして――次のページをいた瞬、俺の呼吸が完全に止まった。

『黒川君のことを、記しておく』

きく息を吸い込み、文字を追った。 『黒川君は、極めて腕のつ優秀な科医である。この病院で、をにして尽くしてくれた。から謝している。 ……だが、彼の志向する度で侵襲性のい先医療は、この過疎の町のさな病院では、もはや提供することができない。 彼が腕を振るうためには、数件以の術をこなせる最の術と、度な集治療設備と、彼のとなってく数の専スタッフが必である。 隣の町に設される規模病院こそが、彼の科医としての才能をさせるべき台である。

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