みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第36話

測定器の液晶画面がカウントダウンを表示する数秒が、永のようにくじられた。

ピピッという子音とともに表示された数値は―― 『32 mg/dL』。 篤な血糖発作だった。

「血糖昏です! パーセントブドウ糖液ミリリットルを静注! 同にのルートをキープしてください!」 「はい!」 相澤さんが薬品棚からアンプルを取りし、シリンジに吸いげる。俺は迷うことなくみつさんの腕の正静脈に針を穿刺し、濃度のブドウ糖液をゆっくりと静脈内へと注入していった。

効果は劇だった。 注入を始して分も経たないうちに、みつさんのまぶたがピクリといた。 濁っていた瞳に焦点が戻り、線がゆっくりと俺の顔を捉えた。 そして、かすれた声でさく呟いたのだ。 「……あら。……私、なんでこんなところで寝てるのかしら」 処置の入りで、源蔵さんが「うわああっ」と子供のように泣き声をげた。 「みつ! みつ、分かるか!」 俺はみつさんのをしっかりと握りしめ、穏やかな声で語りかけた。 「みつさん、血液ののお砂糖ががりすぎて倒れたんですよ。もうお薬を入れましたから丈夫です。ゆっくり息をしてくださいね」 「まあ……先、ご迷惑をおかけして、すみませんねえ……」 そのあまりにも普段通りの呑気な声に、俺は張り詰めていた緊張が気に解け、膝の力が抜けてベッドの脇にへたり込みそうになった。

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その、点滴を継続しながら再度測定した血糖値は百まで回復していた。 だが、みつさんの体内に残っているSU剤の効果は持続するため、数に再び危険な血糖へ急するリスクがあった。当院には入院管理の設備がない。 俺はすぐに県央病院の救急来へ話を入れ、これまでの経過と処置内容を伝えて受け入れの承諾を取り付けた。 到着した救急にみつさんを乗せ、救急隊員に紹介状を渡して送りした、待の子には、源蔵さんが、両で顔を覆って座り込んでいた。

俺が隣に腰掛け、「源蔵さん、もう丈夫ですよ」と肩にを置くと、老は涙でぐしゃぐしゃになった顔をげた。 「……若先。あんた、なんで倒れた原因がすぐに分かったんだい」 「先週、源蔵さんが教えてくれたんですよ。『最、婆さんが飯をわない』って」 源蔵さんは目を見張り、ぽかんとをけた。 「……あんな、ただの世話を……覚えててくれたのかい?」 「はい。覚えていましたよ」 俺が微笑むと、源蔵さんは再び両で顔を覆い、声をげて男泣きに泣いた。

そのの夕暮れ、誰もいなくなった診察で、俺は、静かに窓のの夕焼けを眺めていた。 もし、あの朝、俺が黒川先の言葉に屈して病院のシャッターをろしていたら。 もし、この所に俺と相澤さんがいなかったら。

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源蔵さんは救急を呼び、県央病院へ運ばれるまでに最でも分以のをしていただろう。搬送の血糖による脳への逆なダメージを考えれば、みつさんは度と目を覚まさなかったかもしれないのだ。 玄関から処置までの歩の距と、救急で隣町までる分の距。 そして何より――「最、飯をわない」というのない常の呟きを、誰かが記憶の片隅に留めていたかどうかという違い。 域医療の現で命を救うというのは、最の医療械の無だけではないのだということを、俺はこの、骨の髄までいらされていた。

その来事は、に乗るようにして瞬くに柏町の全域へと広まった。 翌週から、来を訪れる患者の数が目に見えて増え始めた。 「度はメディカルガーデンへ移ったけれど、やっぱり戻ってきたい」と、バツの悪そうな顔をして受付につ元患者たちの姿が何もあった。 俺も相澤さんも、っていった理由など何ひとつ問いたださなかった。 「おかえりなさい。お変わりありませんでしたか?」 カルテはすべて、ここに残っているのだ。父がき継ぎ、俺が記録し続けたその続きのページに、俺はただ淡々としい万のインクをらせるだけだった。

そして、みつさんの事件から週のの午だった。

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