みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第39話

同に、の病を持たない無診療所としての設届を提した。 続きを終え、病院に戻ってきた、俺は作業を着た町の板の軽トラックを迎えた。 壁に掲げられていた「永瀬病院」のステンレスの板から、「病」と「院」の文字が取りされ、代わりに「医」と「院」のしい文字が溶接された。

曜だったが、事の音を聞きつけて、所の々が集まってきていた。 真っ先に来たのは佐々源蔵さんで、その隣には退院してすっかり元気になったみつさんが寄り添っていた。原薬局の主、向かいの理髪の夫婦、役の健康推課の職員、そしてあののいおじいさんも杖をついてっていた。 作業員がからり、しくまれ変わった板の全貌が青空のに現れた。

『永瀬医院』

板を見げて、源蔵さんが煙を燻らせながら言った。 「うん。文字がなくなって、かえって読みやすくなったな!」 集まった々から、ドッと温かい笑い声が沸き起こった。 俺の隣にっていた相澤さんが、眩しそうに板を見げながら呟いた。 「……先。名はさくなりましたね」 「ええ、さくなりましたね」 「でも、なくなりませんでしたね。……私たちのこの所は、何ひとつ消えませんでしたね」 「はい」 俺は力く頷いた。

その翌から、俺たちは父の遺したノートに記されていた訪問診療を本格にスタートさせた。

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父のノートに名が記されていた約名の寝たきり患者の自宅を、俺と相澤さんは型の往診に乗って順番に回り始めた。 何も病院に通うことができず、自宅の暗い奥ので痛みに耐えていた老たちが、俺の顔を見るなり、「院先の息子さんかい……顔がそっくりだねえ」と涙を流してを握ってきた。 を訪問して初めて、俺は医療の本当の姿をった。 台所の蔵庫のに何が入っているか。 薬のシートがどこに放置され、何ヶ分み残されているか。 布団からポータブルトイレまで何歩で歩けるか。 病院の清潔な診察に座っているだけでは、絶対にることのできなかった患者たちの「活の真実」が、そこにはすべて剥きしになっていた。

訪問護ステーションのさんとも固な連携を結び、体制での宅取りのネットワークが完成していった。 気がつけば、永瀬医院の常勤スタッフは、俺、相澤さん、井さん、戸さん、そして父の学代の先輩である引退した歳の非常勤医師、パートの事務員を加え、名にまで増えていた。 かつて父がノートに描いた「理の縮体制」が、寸分の狂いもなく現実に結実していたのだ。

がまったある、来に相澤さんの母親である久子さん(歳)がやってきた。

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邪気だと言って診察に入ってきたが、診察を終えた、久子さんは子に腰掛けたまま、静かに俺のを握った。 「先……ずっと、お父様にお礼を申しげたかったんです。でも、にいませんでした」 「父に、ですか」 「はい。……、どこの病院へっても『気のせいだ』とあしらわれ、私は自分が狂ってしまったのだとい込んでいました。でも、院先だけは違いました。『あなたはどこも悪くありませんよ』と突き放すのではなく、『まだ分かりませんね。分からないから、緒にじっくり探していきましょう』と仰ってくださったのです。……あの言があったからこそ、私は今までき延びることができたんです」 俺の胸の奥で、父の言葉が霊した。 『分からないから、緒に見ていこう』――それは、俺自が毎の来で、診断に迷った際に患者に語りかけ続けていた言葉そのものだった。 俺は自分の無力さからその言葉をにしていた。だが、父もまた、同じ謙虚さを持って患者のの横に座り続けていたのだ。

久子さんは帰り際、受付で働く娘の美穂の背を見つめ、目を細めて言った。 「あの子ね、昔から自分のことを何ひとつ話さない子だったんです。私が倒れていたも、学で音を吐いたことは度もありませんでした。……全部見ているくせに、何も言わない子なんです。

先、あの子の言うことはね、全部本当のことなんですよ」

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