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"遺体の上で眠り続けた十四年" 第11話

そこに漂っていたの気配は、完全に散していた。 い、あまりにもい暗の底から、ようやくの誇りき女性の魂が解き放たれ、のへと旅っていったのだという確信が、由里の胸を静かに満たした。

「さようなら、怜奈さん」

由里は涙を拭い、さく微笑んだ。 その微笑みには、の怯えも、絶望の澱も、もう残っていなかった。

彼女は静かにちがると、度も振り返ることなくをにした。 玄関で靴を履き、へる。 振り返り、古い敷の玄関ドアを閉め、鍵を回した。 この敷は、すでに弁護士と産業者を通じて、解体と更化の続きがめられていた。はすべて掘り起こされて清められ、しいに入れ替えられた、この所にあった狂気の痕跡は、跡形もなくから消しられることになっている。 それでいい、と由里はった。 記憶は消えなくても、呪縛の器となったこの建物は、消えるべきなのだ。

扉をて、からしっかりと鍵をかける。 ガチャリ、という乾いた属音が響いた。 それは、にわたって彼女を閉じ込めていた見えない牢獄の扉が、今度こそ完全に、永に閉ざされた音だった。

由里は、坂の途でを止め、空を見げた。 そこには、どこまでも果てしなく広がる、透き通ったれの青空があった。

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ひとつないその蒼穹は、に怜奈が見げるはずだった空であり、由里がずっと見げることを忘れていた空だった。 吹き抜けるが、彼女の髪をさらさらと揺らす。 のたさはまだ残っていたが、そのの奥底には、確実に芽吹きつつあるの確かな温もりが宿っていた。

失われたという歳は、度と戻らない。 若さも、無垢な信頼も、かつて見た幸福な庭のも、すべてはあの男の狂気によって奪いられた。 だが、自分はきている。 者の真で怯えながら眠り続けるだけの「」ではなく、自らの志で息をし、自らのでを踏みしめて歩く、のとして、ここにっている。

由里はコートのポケットにを入れ、く、清らかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 そして、坂の、り輝く相模湾の原へ向かって、力い取りで歩み始めた。 忌まわしい過の呪縛は、いま、完全に解き放たれた。 彼女のに広がるには、の終わりと、しい季節のが、どこまでも眩しくり注いでいた。

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