みかん小説
本棚

"父の治療費70万円を拒んだ夫と、葬儀で開いた黒い封筒" 第4話

私はその類を受け取り、内容に目を通した。

文字を追うにつれ、私の目は特定の箇所で止まった。

そこには、私が婚したも義母の介護を続けるという条項が記されていた。

私は顔をげ、浩を真っ直ぐに見据えた。

「これは、婚も私が義母さんの介護をするというですか?」

浩は腕を組み、当然のことだと言わんばかりの態度をとった。

「族なんだから当然だろ」

彼は苛ったように続けた。

「婚しても、15も緒に暮らしてきたんだ」

浩は自分の都の良い理屈を並べた。

「急にになるなよ」

私はややかな線を向けた。

「今、になると言ったのはあなたです」

浩は私を非難するような目を向けた。

「母さんを見捨てるのか?」

私は歩も引かずに言い返した。

「父を見捨てたのはあなたでしょう」

その瞬、浩の顔がりで引きつった。

穏な空気を察し、修がい声で割り込んできた。

「兄貴も変なんだ」

修は宥めるような調で言った。

「美咲さんがし譲れば、全部丸く収まる」

私は修に線を移し、たく問いかけた。

「私が70万円を頼んだ、丸く収めようとしましたか?」

修はごもった。

浩が横からを挟んだ。

「それとこれとは別だろ」

私は浩に向き直った。

「なぜ別なのですか?」

とも、私の問いに答えることができなかった。

広告

私は元の婚協議を丁寧に折りたたみ、修の持っていた封筒のに突き返した。

「この条項には署名しません」

私の拒絶に、浩が顔を真っ赤にして声を荒げた。

「じゃあ、父親の治療費も自分でなんとかしろよ」

私は静かに頷いた。

「そうします」

浩は嘲笑うように言った。

「おに何ができるんだ?」

私は浩の目を真っ直ぐに見つめ返した。

「それは、婚したに分かります」

その夜、私は再び父の病に戻った。

暗い内で、父は静かに眠っていた。

点滴の透な管が、痩せ細ったい腕に沿って伸びている。

私はベッドサイドの子に座り、父のたいを両で握りしめた。

しばらくして、父がゆっくりと目をけた。

「美咲」

父はかすれた声で私の名を呼んだ。

「浩君は来たのか?」

私は瞬だけ迷った。

しかし、父に嘘をつくことはできなかった。

「来たよ」

父は私を静かに見つめた。

「なんと言っていた?」

私は呼吸をして、正直に話すことにした。

「婚しようと言われた」

父の瞳が、静かに細くなった。

その目に宿っていたのは、りではなかった。

しみでもなかった。

それは、の本性をすべて見通していた、すべてをっていたの目だった。

「そうか」

父はただ言、そう呟いた。

私は言葉を続けた。

「70万円を頼んだら、父さんの治療費は自分で払えと言われた」

広告

父は再び静かに頷いた。

「そうか」

私は最の事実を告げた。

「そので、義母さんの介護は続けろと言われた」

父はゆっくりとく息を吐きした。

そして、かすかな力で私のを握り返してきた。

「美咲」

父の目は、確かなを持っていた。

「、原田先に連絡しなさい」

原田先。野ライフケアの顧問弁護士だ。

「黒い封筒をけるが来た」

父は線をかし、枕元のさな引きしを見た。

私は引きしをけた。

そこには、古びた真鍮の鍵がつだけ置かれていた。

私はその鍵をに取り、父を見た。

「父さん、何を隠しているの?」

父はその問いには答えなかった。

ただ、私のをさらにく握りしめた。

そして、途切れがちなさな声で、しかしはっきりと言った。

「葬儀の、あの男は必ず戻ってくる」

病の壁にかかった計が、午11を告げた。

静かな子音が内に響く。

そのの私は、父の残したその言葉の真を、完全には理解していなかった。

けれど、1ヶ。

父の葬儀がわれた会で、浩は実際にこう言ったのだ。

『母さんの介護に戻れ』と。

私は親族のにち、父の遺を見つめながら、ついに黒い封筒をけた。

そこには、私のまったくらなかった父のもうつのの記録が入っていた。

そしてそれは、勝な佐伯を終わらせるための、最初のな枚だったのだ。

浩が病院のロビーに婚届を持ってきた翌朝のことだ。

彼が再び父の病に現れた、そのに見いのはなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: