"父の治療費70万円を拒んだ夫と、葬儀で開いた黒い封筒" 第7話
父は私のをく握り返した。
「受益者は、おだ」
私はあまりの衝撃に言葉を失い、声をすことができなかった。
父は、私がこれほど驚くことをあらかじめ予していたように、静かな調で話を続けた。
「ただし、すぐに受け取れるものではない」
父の表が引き締まった。
「おの結婚活が終わるまで、私は図して隠していた」
私は混乱したで理由を尋ねた。
「どうして?」
父はしそうな目を向けた。
「浩君が、おのだけを欲しがっていることに気づいたからだ」
私は唇をく噛みしめた。
「父さん……もっとく教えてくれればよかったのに」
父は首を横に振った。
「教えたら、おはすぐに私の元へ戻ってきただろう」
父は優しい声で続けた。
「私は、おが自分の目で真実を見極めるのを待った」
父の言葉は、見すると厳しいものだった。
しかしそれは、易な逃げを与えず、私自にを決めさせるための優しさでもあった。
そのの午、私は病院の静かな相談で原田先と面会した。
さな机のには、湯気をてる温かいほうじ茶と、父が使い込んでいた古い革の帳が置かれていた。
原田先は帳にを置きながらをいた。
「野先は、あなたが70万円を頼んだの会話を、病院の顧問医から詳細に聞いていました」
私は驚いて原田先を見た。
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「父は、っていたんですね」
原田先は頷いた。
「そして、私にこう言いました」
原田先は父の言葉を反芻した。
「『娘があの男の本性をるが、ついに来た』と」
原田先はビジネスバッグから、1枚の分い類を取りして机に置いた。
「これは、野ライフケアの信託契約です」
類には複雑な条項が並んでいた。
「正式な承継の続きは、お父様の確認、葬儀のから始されます」
私は類の文字を目で追った。
「葬儀の……」
原田先は真剣な顔で言った。
「お父様の遺言です」
原田先は類を指差した。
「すべての関係者を集めた公ので、あなたへ渡すよう予定されています」
私はバッグから黒いカードを取りし、見つめた。
原田先がカードについて説を始めた。
「このカードは、単なる会社の役員用カードではありません」
原田先の声に緊張がる。
「受益者本だけが持つことを許された、信託管理カードです」
私はカードのみをじた。
「これを使えば、資産移の即止、すべての契約の保全、弁護士への緊急依頼が実できます」
原田先は私の目を真っ直ぐに見た。
「夫の族が、お父様の財産をしでもかそうとしたら、その瞬にすべてを止めます」
私は顔をげ、窓のを見た。
く曇ったの空から、また細いが落ち始めていた。
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ガラスを伝う滴を見つめながら、私は問いかけた。
「父は私に、何をさせたいのでしょう?」
原田先は、しだけ目を伏せて静かに答えた。
「何も命じてはいません」
原田先は再び私を見た。
「ただ、度とあなたが誰かに利用されないように、周到な準備をしていたのです」
その夜、スマートフォンが震え、浩からいメッセージが届いた。
画面をくと、事務な文字が並んでいた。
『、婚届をす』
私は文字を見つめた。
『おは父親の病院にいろ』
さらに続く文章に、私は目を疑った。
『葬儀のことは、俺たちが考える』
私は暗い画面をじっと見つめ続けた。
彼らは、父の葬儀さえも私のらないところで勝に決め、仕切るつもりなのだ。
その直、今度は加奈からもメッセージが届いた。
『浩さんを責めないでください』
々しい言葉が並ぶ。
『あなたはもう、彼の族ではありません』
私はスマートフォンを持ったまま、しだけ声をげて笑ってしまった。
そのわざとらしい文章を、が同じホテルの部のベッドので、を突きわせて作っている姿が容易に目に浮かんだからだ。
私はめた気持ちで、に宛ててい返信を打ち込んだ。
『わかりました』
文字を打つ指に迷いはなかった。
『では、葬儀のにお会いしましょう』
送信ボタンを押した、私は録音アプリをいた。
今の病での浩とのやり取りを保したデータを、原田先のメールアドレスへ転送した。
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