みかん小説
本棚

"通訳を笑われた家政婦は、会長が20年前に捨てた娘" 第12話

シュミットがややかに言った。造に選択の余はなかった。

「分かりました」

彼は歯をいしばる。

「森美咲をプロジェクト責任者に任命し、契約に連名させることにします」

秘が急いで契約を修正した。

グループ代表:神崎造 シュミット・インダストリーズ代表:ウーリ・シュミット プロジェクト責任者:森美咲

美咲の名が契約に公式に記された。造が先に署名し、美咲にペンを渡す。

の目がった。造の目にはりがあり、美咲の目には静さがあった。

美咲はゆっくりと画画、自分の名をいた。

森美咲。

雑巾を握っていたそのが、今、億円の契約に署名をしたのだ。

シュミットがを叩く。

「おめでとうございます。歴史な瞬です」

彼のチームメンバーも拍をした。しかし造側の々は拍をせず、ただ呆然とち尽くしている。

シュミットが美咲に言った。

「森マネージャー、来週から本格にプロジェクトが始まります。しっかり準備をお願いします」

「はい。そのようにいたします」

シュミットが造を見る。

「森マネージャーの待遇改善はいつ頃能でしょうか。昨お約束した件、倍、万円から百万円へ」

造の顔がこわばる。

「来から反映いたします」

広告

「結構です」

シュミットが満そうに頷き、契約の締結式が終わった。シュミットのが広をてく。

扉が閉まり、残ったのは造とその子供たち、役員たち、そして美咲だけだった。

い沈黙が流れる。造がゆっくりと美咲の方へ向き直った。

「お……」

声が震えている。

「満か」

美咲が顔をげて造を見つめた。

「まだです。まだ終わっていませんから」

美咲が首の傷跡に触れた。造がその傷跡を見た瞬、全が凍りつく。

あの傷跡。どこかで見たような……。

美咲が静かに言った。

「会、つお尋ねしてもよろしいですか。のの夜を覚えていらっしゃいますか」

造の顔が真っになった。男の正が勢いよくちがる。

美咲が続けた。

「あの夜、がっていましたね。そしての女がこのののに追いされました。妊娠ヶの体で、く当てもなく」

美咲の声はたく沈んでいく。

「その女が誰か、覚えていらっしゃいますか」

造の唇がわなわなと震えた。

「まさか、おは……」

美咲がゆっくりとエプロンをした。そして造をまっすぐに見つめる。

「はい。私は森美咲ではありません」

広が静まり返った。美咲はしばらく言葉を止め、そしてぶりに自分の本当の名をにした。

「神崎美咲です。会の娘です」

造がろによろめいて、ソファに座り込んだ。

広告

役員たちが仰する。

「会の娘……?」

良治とさやかは信じられないという顔で美咲を見つめた。そして正は涙を流していた。

美咲が正を見た。

「お久しぶりです、お兄さん」

彼女の目からも涙が流れ落ちた。ぶりの再会だった。

「神崎美咲です。会の娘です」

その告が、広の空気を完全に凍らせた。

造はソファに座り込んだまま、をけて美咲を見つめている。、のる夜にのへ追いした娘が、今目のにっている。

午。広はのような沈黙に沈んでいた。次男の良治が先にをく。

「そんな馬鹿な。俺たちに姉さんがいたって? それも父さんが追いした……」

末娘のさやかも信じられないという表だった。

「お父様、これはどういうことなの。うちの族はだったじゃない」

「だった」

男の正が震える声で言った。

「元々俺たちはだったんだ。美咲姉さんは、俺たちの女だった」

正が美咲を見つめる。

「、父さんが追いした。な体で」

「何ですって?」

さやかが仰した。正が続ける。

「俺はあの歳だった。クリスマスの頃だ。美咲がドイツから戻ってきた。お腹がこんなにきくなっていて、それなのに父さんが……」

正の声が震えた。

「のへ追いした。のるの夜に。円も渡さずに」

「まさか。

父さんがそこまでなさるはずがない」

良治が首を振るが、正は叫んだ。

「なさったんだ! 俺が見たんだ、この両目で」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: