"通訳を笑われた家政婦は、会長が20年前に捨てた娘" 第15話
美咲が扉をけると、正は目が赤く充血していた。泣いていたようだ。
「入ってもいいかな」
「はい」
正が部のに入り、さな部を見回した。
「ここで暮らしたのか」
「はい」
「こんなに狭いところで……」
正の声が震えた。
「すまない。本当にすまない」
「お兄さんのせいではないと言ったじゃありませんか」
正が首を振る。
「俺もあそこにいた。のあの。俺は男だったから止められたのに、しなかった」
正が拳を握った。
「怖かったんだ。父さんのりに触れて、俺まで嫌われるんじゃないかと。俺は本当に卑怯なだ」
正が膝まずいた。許してくれと懇願する。美咲は彼をたせた。
「ってください。お兄さんは私によくしてくれました。覚えています」
美咲が寂しそうに笑う。
「私が娘を産んで入院していた、匿名で百万円が振り込まれたこと。お兄さんでしたよね」
正が頷いた。
「それくらいしかしてやれなくて……」
「それで分です。そのおで私は退院できました。結のミルクを買って、部の敷を払いました」
美咲が兄のを握った。
「もしあのおがなかったら、私たち親子はで凍えんでいたかもしれません」
正の目から涙が流れた。
「お兄さんが救ってくれたんです。私たちを」
は抱きった。ぶりの抱擁だった。
しばらくそうしていた、正が尋ねた。
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「結の写真を見せてもらえないかな」
美咲が携帯話を取りし、歳の女子のるい笑顔が映った写真を見せた。
「いな。おに似ているね」
「いいえ。お父さんに似ているんです」
美咲が別の写真を見せた。古い黒写真。若い男性が本を持って笑っている。
「結のお父さんです。哲学科の学院でした」
「優しそうなだな」
「優しかったです。本当にいいでした」
美咲が写真を撫でる。
「毎図館で会いました。同じ本を読んで、同じ教授の講義を聞いて。ある告されました。緒に論文をかないかって。それが始まりでした」
美咲が笑った。
「哲学を志す者たちの恋らしいでしょう。ああ、幸せでした。本当にかったけれど」
沈黙が流れた。正が慎に尋ねる。
「これからどうするつもりだ」
「プロジェクトを終えてります。とりあえず結が卒業するまでは京にいなければなりませんから」
美咲が窓のを見た。
「そのは、ドイツに戻るかもしれません。論文を終わらせようかとっています。遅れですけれど。まだ気になるんです。ハイデガーが言った、気遣いの概が」
正が妹のを握った。
「もう度やり直せないかな。俺たち族。父さんも悔しているんだ。から」
「分かっています。今お父さんが泣いているのを見ました。
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でも……遅いんです」
美咲が首の傷跡に触れた。
「この傷ができた、私はお父さんを許しました。そうしないと私が狂ってしまいそうだったから。だから許しました。でも、忘れることはできません」
の苦しみ。で子供を育てながら経験した全てのこと。美咲が目をける。
「そしてお母さんを……お母さんは私のせいでくなりました」
「違う。お母さんは臓の病気で……」
「娘を守れなかったという罪悪。それがお母さんの臓を病ませたんです」
正は何も言えなかった。美咲が席からちがる。
「お兄さん、もうお帰りください。遅いですから。でも、お兄さんだけはこれからも連絡を取りいましょう。ゆいも紹介します。いつか」
正が妹をもう度抱きしめ、部をてった。
翌朝。美咲はいつもより遅く起きた。
政婦ではなくなったため、きちんとなりをえて広へ向かう。そこには造と子供たち、そして役員たちが集まっていた。雰囲気がぎこちない。
「来たか」
造が美咲を見た。
「座りなさい」
「っています」
美咲がたく答えると、造が類の束を差しした。
「プロジェクト関連の類だ。確認してくれ」
美咲が類を受け取ると、秘が別の類を差しした。
「こちらは事発令です」
美咲が類を広げる。
『事発令 森美咲 現政婦 経営企画取締役に発令 収千百万円』
美咲の目がきくなった。
「取締役ですか」
「シュミット社が求した」
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