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"認知症に仕立てた息子夫婦が奪った実印は偽物だった" 第1話

夕方のをし過ぎた頃だった。息子の健が玄関のドアをけて入ってきた。

いつもより表がるいようだ。はる子は台所で皿洗いをしていたを止め、顔をげた。

「お母さん、今はいい気だから、しにでも当たりにきませんか?」

健の声は軽やかだった。

嫁のさやかもろから入ってきて、微笑んでいる。

「そうですよ、お母さん。最ずっとにいらっしゃったじゃないですか」

さやかはよく続けた。

「ドライブでもしてきたら、気持ちがいいとって」

はる子は濡れたを拭きながら、窓のを見た。なのでがく、すでに辺りは暗くなり始めている。しかし、息子夫婦が緒にドライブにこうという誘いを断る理由はなかった。

「ええ、いいわね。着替えてくるわ」

はる子は自に入り、クローゼットからコートを取りした。

のに買った黒いダウンジャケットだ。ポケットがいところが気に入っている。バッグに財布と携帯話をしまい、部をた。

の運転は、嫁のさやかが担当した。助席には健が座り、はる子は部座席に乗り込んだ。が発すると、窓のにぼたんがり始めた。いの結晶が灯のに照らされ、キラキラと輝きながら落ちてくる。

「今、初ですね」

さやかが窓のを見ながら言った。

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その声は弾んでいるようでありながら、どこか緊張しているようにもじられた。

はる子は特に何も考えず、静かに頷いた。

は慣れた並みを抜け、次第に郊へと向かっていく。ドライブというくらいだから町をれるのは当然だとい、最初は気にしていなかった。

しかし、分、分と過ぎても、はただり続けた。

灯もだんだんとなくなり、周りはすっかり暗に包まれている。

「健、私たちはどこへくの?」

はる子が恐る恐る尋ねた。

健はバックミラーで母をちらりと見て答えた。

「いいところですよ。もうすぐ着きますから」

い返事だった。それ以は質問しにくい雰囲気が漂っている。さやかはだけをじっと見据え、黙々とハンドルを握っていた。はる子は胸の片隅が息苦しくなるのをじた。何かがおかしい。

やがてがまったのは、里れた建物のだった。

階建ての建物で、入りには『希望の介護ホーム』という板が見えたはる子の臓が、ドクンと嫌な音をてて落ちた。介護ホーム。なぜこんな所に来たのだろう。

「お母さん、りてください」

健がのドアをけながら言った。

「どうしてここに来たの?」

はる子の声はかすかに震えていた。さやかがろのドアをけ、はる子のを握った。そのはひどくたかった。

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「お母さん、とりあえずに入って話しましょう。は寒いですから」

はる子は仕方なくからりた。に力がまったく入らない。玄関のドアをけてに入ると、温かい空気と共に、特の消毒液の匂いがをついた。

受付に座っていた職員が顔をげた。代くらいに見える女性だった。

「はる子様でいらっしゃいますね」

職員が微笑みながら尋ねてきた。

はる子は答えることができなかった。どうして自分の名をっているのだろう。さやかがにた。

「はい、そうです」

さやかは自分のバッグから透のファイルを取りした。には類が何枚か入っている。それを職員に渡した。

「事にお話していたものです」

職員は受け取った類を元で広げた。はる子はその景を隣で呆然と見つめていた。何が起こっているのか理解できない。

「保護者の方の署名欄が空欄ですね。こちらにサインをお願いします」

職員がペンを差しした。

健がそれを受け取る。彼のが微かに震えているのが見えた。しばらく躊躇していたが、すぐに自分の名をき殴った。

「お母様は本から、保護という形でご入所されます」

職員の言葉が、はる子のにはっきりと聞こえた。

入所。

はる子は唇を震わせながら健を見た。

「健、これは体どういうことなの?」

「お母さん……」

さやかが横からを挟み、はる子の腕をく掴んだ。元は笑っているが、目は全く笑っていない。

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