みかん小説
本棚

"認知症に仕立てた息子夫婦が奪った実印は偽物だった" 第8話

「あらまあ、ごめんなさいね」 はる子がぼんやりと笑うと、職員がしいスプーンを持ってきてくれた。

おかずをに運びながら、わざと元からこぼす。

職員がティッシュを差ししてくれた。 表は呆けたように作っていたが、その差しははっきりとしていた。職員はそれに全く気づかない。

、廊を歩いていると護師に呼び止められた。 「はる子様、今は何曜かわかりますか?」 はる子はわざと首を傾げた。 「さあ……曜、かしら?」

「今は曜ですよ」 「あら、そうなの?」 ぽかんとした表を作ると、護師はカルテに何かをき込んだ。 部に戻り、窓のを見る。演技は完璧に能していた。

午頃、息子の健と嫁のさやかが面会にやって来た。 フルーツの籠を持った健は、子を引き寄せて座るなりそうな顔を見せた。 「お母さん、最通帳をどこに置いたか覚えていますか?」

突然の質問に、はる子はぼんやりと健を見た。 「通帳……? さあ、どこに置いたかしら」 はる子が首を傾げると、健の顔からスッと緊張が抜けた。

「の玄関の暗証番号は?」

「それが、どうしてもいせないのよ」 でを押さえるふりをすると、健はあからさまに堵の溜息をついた。 さやかも満そうな笑みを浮かべている。

「丈夫ですよ、お母さん。ゆっくりいしてください」

広告

面会が終わり、が部をてった。 はる子はし待ってからドアをけ、そっと廊に顔をした。はエレベーターのにいる。 ズボンの縫い目からペン型録音を取りし、角にを隠して録音ボタンを押した。

『母さん、完全に認症みたいだ。玄関の暗証番号も覚えてない』 『よかったわ。あとは司法士と程を決めるだけね。来週あたりかしら』 さな声だが、確かな内容だった。

『薬はちゃんとませてるんだろうな』 『ええ、施設で面倒を見てくれるって。来週には終わりよ』 エレベーターのドアが閉まる音がした。

はる子は素く録音を止め、部に戻ってベッドに腰をろした。 また確かな証拠がに入った。司法士、程、そして薬の話。

翌朝、護師がさやかからのい錠剤を持ってきた。 はる子はそれを受け取りに入れると、渡されたをんだ。

しかし薬はみ込まず、舌のに隠しておく。 護師が部をた、すぐにトイレへって吐きし、便器に流した。

しかしそのの夕方、別の若い護師が薬を持ってきたは焦った。 いつものように舌のに隠したが、護師はち止まってしまった。 「おばあちゃん、しおをけてみてください」

はる子の臓がドクンとねた。確認しようとしているのだ。見つかってはいけない。

広告

「おをけてください」 づいてくる護師に対し、はる子はどうすべきか瞬に考えた。 をけかけたその瞬、突然声で笑いした。

「歯磨きって、美しいわねえ!」 突拍子もない声に、護師は戸惑ってを止めた。 「いえ、お薬を……」 「薬はんだわよ。美しかったわ!」

あっけらかんと笑いながらを叩く。本当に正気を失ったのように振るうと、護師は困った顔をしてため息をついた。

「はい。ちゃんとまれたなら結構です」 護師がてくと、急いでトイレへ駆け込み薬を吐きした。 胸が激しく鳴っている。危ないところだったが、なんとか乗り切った。

数が経つと、息子夫婦はさらに油断したようだった。 話もかかってこなくなり、面会も途絶えがちになった。 自分が認症患者のように振るえば振るうほど、彼らはし、を滑らせるのだ。

それにしても、なぜあそこまで財産の処分を急いでいるのだろうか。 ベッドに横になりながら、はる子はの来事をいしていた。

健はさやかに勧められ、きなカフェの経営を始めた。しかし客は来ず、賃だけが嵩んでいく。

泣きついてきた健に、はる子は老の資から千万円を貸した。さらに数ヶ、座して頼み込むに負け、追加で千万円を渡してしまった。

結局カフェは潰れ、千万円の資は完全に消えた。

劇はそれだけで終わらなかった。 『お母さん、僕、にをしてしまって……』 カフェの経営資として、健はから千万円ほど借りていたのだ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: