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"八万八千円のスカーフと離婚届" 第12話

おが欲しかったわけではない。

自分の尊厳と、の真実を取り戻すことだけが、志津の願いだったのだから。

雅也は会社を解雇され、額の借と慰謝料の支払いに追われながら、実の古いアパートにを寄せて雇いの仕事を転々としているという。

恵理子は詐欺未遂と過の横領容疑で警察の捜査を受け、借取りから逃げ回る活を送っているらしい。

そして、拓と真帆。

は学を退し、む所も失い、アパートできりで暮らしながら、アルバイトでい繋いでいると聞いた。

折、志津のスマホに、非通の番号から着信が入る。

留守番話に残された、泣きじゃくる真帆の声。「お母さん、会いたい……ご飯がべられないよ……」。

拓からの文の謝罪メール。「俺が全部悪かった。かけて償うから、もう度だけチャンスをください」。

だが、志津はそのすべてを、度も再することなく削除した。

酷かもしれない。

だが、これが彼らの選んだ選択の、正当な代償なのだ。

失って初めて気づく温もりなど、放した者の単なる儘に過ぎない。

志津はキッチンにち、お湯を沸かした。

丁寧にお茶を淹れ、お気に入りのカップに注ぐ。

窓のには、抜けるような青空がどこまでも広がっていた。

誰かの顔を窺うこともなく、誰かの嘘に怯えることもなく、自分のためだけに淹れた杯のお茶。

そのを喉に流し込んだとき、志津の唇に、で初めての、からの本物の微笑みがこぼれ落ちた。

私のは、今ここから、しく始まるのだ。

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