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"預金拒否の令嬢、五千億の審判" 第6話

学でのいじめの辛さではない。

自分のために、母がを削り、理尽な暴力に耐え続けていることへの悔しさと申し訳なさだった。

気配を悟られないようにしていたはずだったが、隣の部で繕い物をしていたが、静かに襖をけて入ってきた。

母は布団の端に腰をろし、震える亮の背に、温かく骨張ったをそっと置いた。

「亮、泣いているんだね」

「……泣いてないよ」

「嘘をおっしゃい。お母さんのでまで、無理してがらなくていいんだよ」

亮は布団をね除け、涙でぐしゃぐしゃになった顔をげた。

「母さんのせいじゃない! 母さんは、何つ悪いことなんてしてないのに……!」

の瞳に、い慈のが宿った。

母は静かに首を横に振った。

「いいかい、亮。お母さんはね、あので働かせてもらえていることに、から謝しているのよ」

「どうしてだよ! あんなに酷い仕打ちを受けてるのに!」

「あの所で働いてお料をいただけるから、あなたにご飯をべさせて、学に通わせてあげられるんじゃないの。だからね、誰に何を言われようと、ちっとも恥ずかしいことなんてないのよ」

「でも……母さんがどんどん痩せていくのを、俺は見ていることしかできないんだ……!」

のが瞬だけ止まり、次の瞬、母は両腕で亮の体をく抱きしめた。

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「お母さんがをげるのはね、がいからじゃないのよ。あなたという、かけがえのない宝物を守るためよ。お母さんのたったつの誇りは、亮、あなたなんだから」

母の痩せた胸の温もりと、鹸の微かな匂いが亮を包み込んだ。

のひらはヤスリのように荒れ果てていたけれど、その温もりは、世界のどんな豪奢な宝よりもく亮の魂を温めた。

母の誇りである自分を、自分自ので汚すわけにはいかない。

その夜、亮の涙は止まった。

翌から、亮は学でどんな湿な言葉を投げかけられても、ただ黙って耐え続けた。

リカがどれほど嘲笑おうと、取り巻きがどれほど囃してようと、決してを表にさず、勉に没した。

母が命を削って守ってくれているこのを、秒たりとも無駄にしてはならないと自分に言い聞かせ続けた。

やがて学を卒業し、亮は返済の奨学を勝ち取って難関、そして国学へと学した。

学代も寝るを惜しんで働き、プログラミングとITインフラの技術を独学で極めていった。

学卒業と同に、亮はたったでさなITベンチャーをちげた。

来るも来るもサーバーに泊まり込み、顧客の信頼をつずつ積みげていった。

そしての歳が流れた。

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亮が興した会社「劇テクノロジーズ」は、現代社会のあらゆる融・通信ネットワークを根底から支える巨ITインフラ企業へと成を遂げていた。

証プライムにし、価総額は千億円を突破。

本を代表するテック企業のトップとなった亮だったが、彼自の私活は、学代と何つ変わっていなかった。

都内の質素な賃貸マンションにみ、贅沢を好まず、移にはを使い、は量販の吊るしのスーツを着続けた。

しかし、どれほど富と名声を得ようとも、最の母がその果実をわうことは叶わなかった。

亮が会社をちげて軌に乗りかけた代半ばの頃、の過酷な労働で体を蝕まれていたは、突然の脳血で倒れ、病院のベッドで静かに息を引き取ったのだった。

の直まで、腫れがったで息子のための朝を作ろうとしていた母。

遺品を理していた亮が見つけたのは、さな桐箱に切にしまわれていた、母が遺しただった。

『亮へ。あなたは私の誇りです。どんなも胸を張ってきなさい』

あののる夜、泣きじゃくる亮を抱きしめながら母が囁いてくれた言葉と、寸分違わぬ文字がそこにあった。

「……母さん」

宴会の片隅で、亮はにしたウーロン茶のグラスを静かにテーブルに置いた。

の記憶の奔流が、昨のことのように胸を締め付ける。

あの頃の自分たちがいた同じ町、同じ空ので、今夜、自分は再びっている。

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