みかん小説
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"床下の小さな指輪" 第12話

代わりにポケットへ戻した。

美優はに執着してんだのではない。

むしろ逆だった。

夫の借を300万円も返した。

自分は事を切り詰めて働いた。

それでも最に残しただけは、ヒロトの将来のために守ろうとした。

美優が拒んだのはを失うことではない。

これ以、夫の賭博に息子の未来まで奪われることだった。

文は息子をしているつもりだった。

だが、健が問題を起こすたびに庇い、を払い、責任から逃がした。

その結果、健は何度でも同じことを繰り返した。

6には300万円。

そして6には、母親がをかけて守ってきたそのものを担保にした。

もし健が再び借を作らなければ、油は差し押さえられなかったかもしれない。

れも壊されなかった。

美優はさらにい、に残された能性がある。

文が守り続けた息子自が、最には秘密を掘り起こした。

田は空きを振り返った。

文は刑務所へ入った。

健も英も、それぞれ罪を負った。

油はなくなった。

は散り散りになった。

そして最もきな代償を払ったのは、何も悪くないヒロトだった。

母親を失い、その母親が自分を捨てたのだと6信じさせられた。

真実が分かったには、父も祖母もいなくなった。

伊藤が施設を訪ね、額ながら毎の支援を始めたのは、そのことへの償いだった。

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警察もまた、美優に対して消せない過ちを残した。

真実をらかにすることはできた。

だが6を返すことはできない。

美優の名誉は回復できても、息子を抱きしめるまでは戻らない。

「もっとく見つけてやれなくて、申し訳ありませんでした」

田はをげた。

しばらくそのままかなかった。

やがてちがる。

の空が赤く染まり始めていた。

商ではじまいの音が聞こえる。

昔と同じような夕方だった。

けれど、もう佐藤油の搾油がく音はしない。

ごま油の瓶を載せた自転が通ることもない。

美優がヒロトを背負い、このを急ぐ姿もない。

田はゆっくり歩き始めた。

背では、空きの雑がに揺れていた。

割れた瓦のへ、黄い落ち葉が1枚落ちる。

6セメントのに閉じ込められていた真実は、ようやくへた。

それは族の形を完全に壊した。

しかし、壊したのは真実ではなかった。

への執着。

賭博。

息子への歪んだ庇護。

そして、見て見ぬふりを選び続けた々。

それらが積みなり、すでに族はずっとから壊れていたのだ。

19911116の夜。

美優は最まで、息子へ渡すさなの指輪を握っていた。

6、誰からも「子供を捨てた女」と呼ばれながら、そのだけは息子をさなかった。

1997。

そのさな指輪とともに美優は帰ってきた。

もう言葉を発することはできなかった。

けれど、そののに残されたものが、彼女が本当は何を守ろうとしていたのかを誰よりも雄弁に語っていた。

田の姿は、やがて商の角を曲がって見えなくなった。

静かになった空きに、夕暮れのだけが吹き抜ける。

そこにはない。

セメントもない。

閉ざされたれもない。

ただの擦れる音だけが続いていた。

そしてその所から、い染みついていた油の匂いも、しずつ消え始めていた。

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