みかん小説
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"夫が遺した土地と、隣家の3台の車" 第1話

「物置はもうらないでしょう」

「照子さん、奥の物置を片づけていただけません? 来には根をつけたいんです」

夫の命の朝、隣の真由美さんは、玄関先でそう言った。

には菓子折りを持っていた。

「娘夫婦が戻ってきましてね。が3台になったでしょう。せっかくだから、全部根のに置きたいのよ」

私は菓子折りではなく、真由美さんの顔を見た。

「根というのは、どこにですか」

「決まってるじゃない。お宅の側の空きよ」

まるで、自分の庭の話でもしているようなぶりだった。

私はわず、の側へ目を向けた。

細いに、が3台並んでいる。

いずれものだ。

奥には、くなった夫の正夫が使っていた物置がある。

の部が、物置の扉のすぐまで迫っていた。

「物置には、主の具が入っています」

私がそう答えると、真由美さんは困ったように笑った。

「でも、もう使う方はいらっしゃらないでしょう?」

私はその言葉を聞いて、胸の奥がたくなった。

夫がくなったのは、今の7だ。

まだ3かも経っていない。

朝の散歩から帰ってきて、居で倒れた。

救急が来たには識がなく、病院で息を引き取った。

享68歳。

40以を緒に過ごしただった。

「正夫さんには、いよくしていただきましたから」

真由美さんは話を続けた。

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「ですから、これからも切に使わせていただこうとっているのよ」

私はゆっくり息を吸った。

そして言った。

「駐は、返してください」

真由美さんの笑顔が止まった。

「……え?」

「を返していただきたいんです」

彼女は何度か瞬きをした。

「照子さん、どうされたの? 急にそんなこと」

私は静かに答えた。

「急ではありません。主とから話していました」

「でも、正夫さんはずっと使っていいって」

「私は、その約束を聞いていません」

真由美さんはし声をめた。

「20も使っているのよ」

「だからこそ、きちんとお話ししたいんです」

彼女は菓子折りを差ししたままだった。

私はそれを受け取らなかった。

やがて真由美さんは、作ったような笑顔を浮かべた。

「まあ、今はお疲れなのね。またを改めます」

そして隣のへ戻っていった。

私は玄関の戸を閉めた。

しばらく、そのにっていた。

夫がくなってから、初めて隣へく見を伝えた。

昔の私なら、曖昧に笑って済ませていただろう。

正夫も、所との揉め事を嫌うだった。

だから20もの、あのは隣ので埋まっていた。

私は仏壇のに座った。

遺の正夫は、し照れたように笑っている。

「お父さん」

さく声をかけた。

「とうとう、言ったよ」

返事はない。

線の煙だけが、まっすぐがっていった。

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