みかん小説
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"夫が遺した土地と、隣家の3台の車" 第11話

物置に残っていたのスロープ

役所から帰ったの夕方、私は物置をけることにした。

隣の黒いミニバンはだった。

今なら扉をけられる。

錆びた鍵を差し込み、ゆっくり回した。

いかしていなかった扉は、途で引っかかった。

し力を入れると、ぎい、と音をてていた。

には、正夫の匂いが残っているような気がした。

くず。

古い油。

属製の具箱。

棚には、名をいたさな箱が並んでいた。

釘。

ねじ。

蝶番。

測量用の具。

正夫は何でも自分で直そうとするだった。

私は棚の埃を払い、具箱をけた。

槌の柄には、夫の名がさくかれていた。

若い頃、仕事でほかのの具と混ざらないようにいたのだろう。

私はその文字を指でなぞった。

奥の壁へ目を向けると、細いの板がてかけてあった。

「あ……」

ハツさんのために作ったスロープだった。

私はゆっくり引きした。

板の表面には、子の輪が通った黒い跡が残っていた。

端には、何度も削り直した跡があった。

正夫は、使いやすくなるまで何度も試していた。

ハツさんがくなった、から返されたのだろう。

私はスロープを庭へ運んだ。

になった所へ置き、雑巾で埃を拭いた。

すると、板の裏に鉛でかれた文字があった。

『さん用 段差9cm』

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私はわず笑った。

正夫らしい字だった。

寸法を残しておけば、から直すに役つ。

きっとそう考えたのだ。

私はスロープを見つめた。

この板は、誰かを助けるために作られたものだ。

正夫は、隣のが困っているからを貸した。

だからといって、自分たちの暮らしまで差しすつもりではなかったはずだ。

夫が親切だったことを、私は誇りにっている。

その親切が、から勝な権利のように扱われることには、納得できない。

私はスロープを物置へ戻した。

そして、扉を閉めた。

帰宅したミニバンが、再び物置のを塞いだ。

私はそのを見ながら決めた。

次の曜、のご主に直接話そう。

今度は、真由美さんだけでなく、さんにも説する。

20、最初にを借りたいと言ったのはさんだった。

あの便箋をいたも、さんだ。

話しいの相を、違えてはいけない。

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