みかん小説
本棚

"夫が遺した土地と、隣家の3台の車" 第15話

娘が持ってきた古い写真

11の最初の曜、娘の由紀が京から来てくれた。

駅へ迎えにくと、由紀はきな袋を持っていた。

「お母さん、お疲れさま」

私は笑った。

「わざわざ来なくてもよかったのに」

由紀は首を振った。

「私もを見たかったから」

自宅へ戻ると、由紀は側の空きへまっすぐ向かった。

「本当にがなくなったんだね」

私はうなずいた。

「ようやくね」

娘は物置まで歩いた。

「こんなに広かったんだ」

「昔はここで、お父さんがいろいろ作ってたんだよ」

由紀は懐かしそうに笑った。

「覚えてる。学の作での本棚を作ったも、ここで伝ってもらった」

私はうなずいた。

正夫は娘に甘い父親だった。

由紀が学で作品を作ると聞くと、仕事から帰ってきてから設計図を描いた。

ただし、何でも代わりに作るわけではなかった。

「自分でできるところは、自分でやるんだぞ」

そう言いながら、危なくない部分を娘に任せていた。

由紀は袋から古いアルバムをした。

「これ、実から持っていった写真を理してたら見つけたの」

私はアルバムを受け取った。

には、若い頃の正夫が写っていた。

作業着姿で、物置のにっている。

別の写真には、まだ学だった由紀が、の端材を持って笑っていた。

写真の奥に、広い空きが写っていた。

広告

は1台もない。

「こんなだったねえ」

私はわずつぶやいた。

由紀は隣に座った。

「お母さん、畑にするんでしょう?」

私はうなずいた。

「しだけね」

「私も伝うよ」

「京からわざわざ?」

由紀は笑った。

「たまには帰ってくる理由があってもいいじゃない」

私は娘の肩へを置いた。

「ありがとう」

アルバムをめくっていると、1枚の写真が目に留まった。

ハツさんが子に座り、正夫とさんがスロープのそばにっている。

正夫は腰をかがめて、何かを説していた。

さんは真剣に聞いている。

私は写真の端を指でなぞった。

「この頃は、よかったんだけどね」

由紀は尋ねた。

「隣のたちのこと?」

私はうなずいた。

「最初は本当に困っていたから、助けたかっただけなの」

娘は静かに答えた。

「それは違ってなかったとうよ」

私は顔をげた。

由紀は続けた。

「でも、その親切をいつまで受け続けるかは、相も考えなきゃいけなかったんだよ」

私はしばらく黙った。

「お父さんも、返してほしいって言いづらかったんだろうね」

由紀はうなずいた。

「優しかったからね」

私は笑った。

「そうだね」

娘は私を見た。

「でも、お母さんはちゃんと言えた」

私はし照れた。

「何度も練習したんだよ」

由紀は驚いた。

「練習?」

私は笑った。

「鏡のでね。『駐は返してください』って」

娘は吹きした。

「お母さんらしい」

私も笑った。

い返せば、最初にあの言葉をにする、声が震えそうだった。

相に嫌われるのが怖かった。

鳴られたらどうしようとった。

けれど、言ってよかった。

私はアルバムを閉じた。

「由紀。の相続のも、いろいろありがとうね」

娘は首を振った。

「私は京にがあるし、このはお母さんが暮らす所だから」

正夫がくなった、相続については娘と話しい、必な続きをめていた。

自宅と側のを私が取得することでし、登記も済ませた。

由紀はその、言ってくれた。

「お母さんがして暮らせるのが番だよ」

私はその言葉に、どれほど救われただろう。

今、が戻ってきたことで、ようやく相続した全体が自分の暮らす所になった気がした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: