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"赤鬼教師が認めた禁断の解答" 第1話

傾きかけたの陽射しが、放課の教を濃い茜といで塗り分けていた。窓ガラス越しに吹き込んでくるのには、運の乾いた砂埃の匂いと、どこかくで練習に励む吹奏楽部の管楽器の揃いなスケール練習の音が混ざりっている。

の藤蓮は、使い古されたの机のに両肘をつき、界の央に鎮座する枚の更を、まるでそこに世界の秘密が隠されているかのように睨みつけていた。

机のには、黒いスリーブの端が破れ、角という角が丸く擦り切れたMONO消しゴムが転がっている。そのすぐ隣には、グリップのゴムが経劣化でっぽくなり、クリップ部分が折れ曲がった黒いシャープペンシル。つの文具が投げすの先に、B4サイズの答案用が横たわっていた。

用の最段には、見慣れた朝体の枠線で囲まれたタイトルが印刷されている。

『本史 第2回 定期テスト』 その隣の『3 組 名』の欄には、蓮が試験始直に殴りきした自らの氏名が、斜めに躍っていた。

問題用兼答案用というケチくさい仕様のプリントの第問。そこに、太い性赤インクで容赦なく引きろされた、巨なバツ印が刻まれていた。

、次の問いに答えなさい。(全5問・1問10点、計50点) 1 本能寺の変で、織田信は本能寺で智秀に攻められました。

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このとき、織田信が最初に言った言葉を答えなさい。(10点)

そして、空欄に鉛でかれた蓮の解答。

答え:「えっ」

バツ印のには、定規で引いたように真面目な線とともに、朱のインクで丁寧に、しかし刃物のように鋭い致の講評が添えられていた。

像でかない。

「……いや、絶対に言ったはずなんだよ」

蓮は誰に聞かせるでもなく、乾いた唇からため息交じりに呟いた。喉の奥がちりちりと痛む。納得がいかない。何度見返しても、ので正の京都にんでみても、その結論だけは揺らがなかった。

「何が『絶対に言ったはず』なのよ。いい加減諦めてカバンにしまいなさいよ、その珍解答」

すぐ隣の列から、ピシャリとい声がんできた。 同じクラスで、次から学首位を維持し続けている野葵だった。黒髪をきっちりと襟ので切りそろえたボブカットの女は、机の横に掛けていた通学鞄のファスナーを几帳面に閉め終えると、呆れ果てた差しを蓮に向けた。

葵の机のに置かれた同じテスト用の第問には、狂いのない真円の赤丸がつけられている。解答欄にかれていたのは、教科の字句をそのまま写し取ったような楷の文字――『非に及ばず』。

葵は蓮の机のに歩み寄り、教科を胸に抱えながらややかに見ろした。

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「あんたね、最の学期テストよ? ただでさえ指定推薦の評定に関わる事な期に、あの『赤鬼』こと鬼塚先のテストでふざけるなんて、命らずにも程があるわ」

「ふざけてなんかないって、本気なんだよ!」 蓮はシャープペンシルの先で、答案用の『えっ』の文字をコツコツと叩いた。芯が折れ、さな黒いが更のに散る。 「葵、よくそののシチュエーションをリアルに像してみてくれよ。は正、未だ。信は統を目にして、わずか数の姓や女衆だけを連れて、本能寺でぐっすり熟してたんだぞ? 京都の真んだ。敵なんているはずがない。誰もが自分の方だとって、完全にオフモードで寝てたんだ。そこへいきなり、夜のを破って何千何万もの装備の兵靴の音が響いて、鬨の声ががって、方から鉄砲があられと撃ち込まれてのががったんだぞ? として、物として、最初に喉から漏れる音は何だ? 『えっ』以にあるわけないだろ!」

「信は戦国の覇王よ。凡とは脳の構造が違うの」 葵は歩も引かず、腕を組んで眉を吊りげた。 「信公記を読んだことある? 太田牛が残した級史料よ。そこには、騒を聞きつけた信公が最初に『々の喧嘩か』と問い、森蘭丸が『智が謀反と見え申し候』と告げたとき、ただ言『非に及ばず』と仰せられた、ってに記録されているの。

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