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"赤鬼教師が認めた禁断の解答" 第2話

これが歴史事実。テストで問われているのは、文献に記された事実であって、藤蓮くんの陳腐な常覚じゃないの」

「だから! その信公記だって、がからいたものだろ!」 蓮はちがり、弁を振るった。教の板がギシと軋む。 「『々の喧嘩か』って台のに、絶対にコンマ数秒のがあるはずなんだよ。が寝込みを襲われて、爆音と炎で目を覚ました瞬、脳が現実を認識するまでの空の瞬がある。そのときに漏れる息の音が『えっ』なんだ。そのに『……おい蘭丸、何の騒ぎだ、誰かの喧嘩か』って続くのがの理現象だ。『非に及ばず』なんてのは、状況を完全に把握して、もう逃げがないと悟ったの、覚悟完のフェーズの言葉だろ! 問題文をよく読めよ。『最初に言った言葉』っていてあるじゃないか!」

「屁理屈をこねないの!」 葵が眉を指で押さえ、いいため息を吐きした。 「問題文の『最初に言った言葉』は、『歴史記録として残されている最初の発言』というに決まってるでしょ。国語の読解力まで赤点取る気? だいたいね、もし信が本当に『えっ』って言ってたとして、それを誰が記録に残すのよ。の織田信がけなく抜けな声を漏らしたなんて、記録係の太田牛がくわけないじゃない」

「ほら見ろ! やっぱり隠蔽されてるんじゃないか!」

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「隠蔽じゃなくて、歴史の様式美よ!」

の激論が夕暮れの教に反響した。黒板の隅にかれた「直:藤」の文字が、に照らされてく浮かびがっている。掃除を終えて教の隅でたむろしていた数の男子徒たちが、何事かとニヤニヤしながらこちらを伺っていた。

そのとき、教の扉がガラリと々しい音をてていた。

敷居を踏み越えて入ってきたのきさに、教内の空気が瞬にして凍りついた。

髪の混じった角刈りの、縁のスクエア鏡の奥でる細い、皺ひとつない仕てのグレーのスーツ。には席簿と朱肉のついた細の赤ペンを握りしめている。 学主任にして本史担当教諭、鬼塚鉄男。通称「赤鬼」。

鬼塚は教の央に仁王ちになり、ゆっくりと線を巡らせた。その線が蓮の机の、そして広げられた答案用の巨な赤バツに止まる。

「藤」

く、底から響くような声だった。

「……はい」 蓮は直の姿勢を取り、背筋にや汗が伝うのをじた。

「放課、貴様を職員で待っていたのだが、向に来る気配がない。ここで何をつまらん議論にを咲かせている」

「あ、すみません、その……答案の解釈について、野とし……」

「言い訳はだ」 鬼塚は懐から懐計を取りしてチラリと確認すると、踵を返した。

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「その用を持って、職員へ来い。今すぐだ」

背広の裾を翻してっていく教諭の背を見送りながら、葵が蓮の横腹を肘で突いた。 「ほら、言わんこっちゃない。連よ。覚悟決めなさい」

「……わかってるよ。でも、俺は違ってない」 蓮は机のの答案用を丁寧につ折りにすると、制のズボンのポケットに突っ込んだ。擦り切れたMONO消しゴムとシャープペンシルをペンケースに放り込み、葵に「じゃあ、ってくる」とく告げて、教をにした。

廊はすでに暗かった。窓枠が落とすい格子状のを踏みながら、蓮は歩歩、職員へと向かった。 階段の踊りにある姿見に、猫背で歩く自分の姿が映る。という、でも子供でもない途半端なき物。教科にかれた記号を丸暗記して、記号通りに解答用を埋めることでしか評価されない々に、どこかで息苦しさをじていたのは事実だった。

職員のいスチール製の引き戸をけると、独特の気と臭気がをついた。印刷のトナーの焦げた匂い、淹れたてのインスタントコーヒーのり、そして積みにされたプリント用が放つ湿ったの匂い。部活指導へ向かう若教師たちの慌ただしい音の奥、番奥の窓際の席に、鬼塚が座っていた。

「失礼します……」 蓮がおずおずとデスクのにつと、鬼塚は鏡を指先で押しげ、机の端を指差した。

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