みかん小説
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"赤鬼教師が認めた禁断の解答" 第6話

彼らがどんなに世界を見つめ、どんなに絶望し、そしてどんな言葉を最に残したのか。教科のに隠されて消えていった彼らの「」の輪郭を、もっとりたいという渇望が、蓮ので静かに芽吹いていた。

だが、鬼塚はその言葉を聞いた瞬、ふっと元の笑みを消しった。 鏡の奥の瞳が、いつもの怜悧で淡な「赤鬼」のを取り戻す。

「先だけなら何とでも言える」

バサリ、と々しい音をてて、鬼塚は広げていた席簿を乱暴に閉じた。その乾いた破裂音が、職員の静まり返った空気を引き裂く。

「テストはテストだ。学問のルールに従えぬ者に、点数を与えることなどできん。次の期末テストで同じような珍解答をいてみろ。今度は庭周じゃ済まさんぞ。……さっさと帰れ。が閉まるぞ」

「はい! ありがとうございました!」

蓮は勢いよくちがり、直角に腰を折ってく礼した。 鬼塚はもう蓮を見ようともせず、元の赤ペンをペンてに戻すと、次の仕事に取り掛かるように別の類の束を引き寄せていた。しかし、その背はどこか、先ほどよりもわずかに丸みを帯びて、かそうに見えた。

職員のいスチール扉を押しけ、廊へと踏みす。 パタン、と静かに扉が閉まった瞬、蓮はく溜め込んでいた息をから気に吐きした。

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ひんやりとしたの夜気が、渡り廊の吹き抜けから流れ込んできて、興奮と緊張で照りきっていた蓮の両頬を優しく撫でげていく。

舎のは、昼の喧騒が嘘のように静まり返っていた。 蛍灯はすでに落とされ、井からぶらがった非常の誘導灯だけが、ぼんやりとしたエメラルドグリーンのを無のリノリウムのに投げかけている。その淡いの帯を踏みしめながら、蓮は歩きした。 キュッ、キュッ、と履きのゴム底が鳴る。その規則正しい音だけが、い井に反響してざかっていった。

元には、つ折りに畳んだテスト用。ブレザーの胸ポケットに滑り込ませると、更の角が布越しに胸をチクリと突いた。そのわずかな痛みが、先ほどまでの鬼塚との対話がではなかったことを蓮に教えていた。

階段の踊りを、蓮は段ばしで駆けがった。 取りは驚くほど軽かった。減点され、巨なバツ印をつけられ、本史の成績としては目も当てられない結果になったというのに、胸の奥を満たしているのは奇妙な揚と、どこまでも澄み渡るようなれやかさだった。

(者たちとの対話、か……)

ので鬼塚の言葉を反芻する。 に入ってからの半、勉といえば暗記のことだった。英語の単語、数学の公式、現代文の評論文の論理構造、そして本史の号と物名。

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どれもこれも、学入試という巨な関を突破するためにへ詰め込む「報」に過ぎなかった。テストが終われば抜け落ち、忘れていく記号の羅列。 だが、鬼塚は言ったのだ。その記号の向こう側に、きていたがいるのだと。 本能寺の焼け爛れた梁ので、最期に弓を握りしめた織田信。その男がじたであろう理尽なへの恐怖と、信じていた秀への驚愕。それは、現代の教できる蓮にとっても、決してい世界の神話などではない。である以、誰もが共しているはずの、々しい皮膚覚なのだ。

階の廊を抜け、組の教のへと辿り着く。 引き戸のすりガラスの向こうは、真っ暗だった。当然だ。刻をらせるチャイムはとっくに鳴り響き、般の徒たちは完全をいられているなのだから。

蓮は引き戸の取っにをかけ、ガラガラと音をてて引いた。

「……あれ?」

暗がりのに、微かな青いが浮かんでいた。 灯のが差し込む窓際の最列、そこには誰の姿もないはずの教に、ぽつんとつのが座っていた。

の主はスマートフォンだった。その液晶画面の淡い反射を受け止めながら、ブレザーの袖から細い指先を覗かせ、に画面をスクロールしていた女が、扉のく音に驚いたように顔をげた。

野葵だった。

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