"月5000円を貯めて泊まった旅館で、妻が「お嬢様」と呼ばれた" 第10話
そこにはもうタバコは入っていない。
休憩所で、坂さんが黙ってガムを1枚くれた。
「やめたのか?」
俺はガムを受け取って答えた。
「やめました。车検の支払いもありますし、娘に臭いって言われまして」
坂さんはで笑った。
それから自分のタバコを指に挟んだ。
をつけずにしばらく见ていた。
「俺もなあ。息子に同じことを言われたことがある」
俺は惊いて坂さんを见た。
「坂さんがですか?」
坂さんは远くの空を见た。
「あいつが学の顷だ。俺は笑って、そのうちやめるって言った。今度な、そのうちな、遊园も钓りも全部回しにした」
坂さんはタバコを箱に戻した。
「その『いつか』は来なかった。あいつは何も頼んでこなくなった。頼んでも无駄だって分かったんだろうな」
坂さんは寂しそうに笑った。
「気づいた时にはもう遅かった」
坂さんは俺の方を向いた。
「がない时に族との约束を守るのが1番难しいんだ。、おはそれを守ってる。したもんだよ」
坂さんはそれだけ言うとちがった。
そしてトラックの方へ歩いていった。
その背を见ながら、俺はった。
坂さんは分、今でも息子さんを待っているのだ。
彩佳もパートのシフトを週に1回増やした。
「ゆいが学童保育にいる时间だけ」
彼女はそう言って、夕方の品しに入るようになった。
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弁当のおかずは质素になった。
唐扬げのが减り、もやしと卵の炒め物のが増えた。
それでも俺は文句を言う気にはならなかった。
ゆいもなんとなくの様子に気づいていたのだとう。
ある晩、俺が帰宅して居间に入った。
座卓のにさな缶が置いてあった。
お菓子の空き缶にマジックで「旅に」と书いてある。
俺は缶をに取った。
「これは何だ?」
ゆいが誇らしげに答えた。
「ゆいの旅贮。お伝いしたら10円もらえるの」
ゆいは彩佳の方を见た。
「お母さんと决めたんだ」
俺は缶の盖を开けてを覗いた。
10円玉が6枚入っていた。
ゆいが言った。
「お父さんの通帐とわせて使っていいよ」
俺は缶を持ったまま、しばらく何も言えなかった。
俺はゆいの头を抚でた。
「ありがとう。事に使わせてもらう」
ゆいがを押すように言った。
「ちゃんと温泉にく时に使ってね。车じゃなくて」
彩佳が台所で吹きした。
俺も声をして笑った。
笑いながら、しだけ目の奥が热くなった。
车検の代は4ヶできっちり払い终えた。
最の3万円を备场に持っていっただ。
田岛さんは「はい、确かに」と言って领収书を书いてくれた。
それから俺の顔を见て笑った。
「よく続いたね」
その间も、旅の座には毎5000円を入れ続けた。
1ヶも休まずにだ。
ゆいの旅贮の缶も、俺の机の引きしの通帐の隣に並べておいた。
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缶の10円玉はしずつ増えていった。
お风吕扫除で10円。
洗濯物畳みで10円。
ゆいは増えるたびに缶を振る。
そして音を确かめていた。
族3の暮らしは、决して豪华なものではなかった。
はに1度あるかどうかだ。
それも駅のファミレスか回転寿司だった。
休みのに族でかける时は、抵彩佳が弁当を作る。
そしてくの公园や川敷へった。
入场料のかからないの运动公园。
には桜が咲く川沿いの。
には遊びのできる喷広场。
俺たちは季节ごとに同じ场所へ何度もかけた。
それでもゆいは、その时间が好きだった。
公园に着いてレジャーシートを広げる。
ゆいはまず弁当箱の盖を开けてを覗き込む。
唐扬げが入っていると、ゆいは両を挙げる。
「やった!」
卵焼きをべると、ゆいは満そうに言う。
「お母さんの卵焼きはやっぱり甘いのがいい」
べ终わると、ゆいは俺のを引いてりす。
鬼ごっこ、縄び、凧扬げ。
俺は息を切らしながら付きった。
配送の仕事で腰には自信があった。
しかし、子供の体力には敌わなかった。
帰り、ゆいは决まって同じことを言った。
「お父さん、またお弁当持って公园こうね」
俺はゆいのを握って答える。
「ああ、また来ような」
俺たちはその会话を何回も缲り返した。
ゆいはしずつきくなっていった。
学2のには、自転车の补助轮が取れた。
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