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"月5000円を貯めて泊まった旅館で、妻が「お嬢様」と呼ばれた" 第16話

「ここ、私の実なの」

俺は言叶を失った。

元の砂利を踏む音さえ、闻こえなくなった気がした。

「のの古い宿」「した旅馆じゃない」

彩佳はそう言っていた。

1ヶに「きな旅馆」と闻いた时も、まさかこれほどの老舗だとはっていなかった。

玄関で最初に俺たちを迎えた男性が、ようやく顔をげた。

「失礼いたしました。支配の松冈と申します」

松冈さんは俺に向かって、もう度丁宁にお辞仪をした。

「様でいらっしゃいますね。お待ち申しげておりました。お嬢様のこと、どうかお许しください。お嬢様にはお嬢様の事がございました」

それから松冈さんは、居さんの1に目で図をした。

「お荷物はこちらでお运びいたします。车はの驻车场へお回ししておきます。まずはお部へご案内いたしましょう」

俺たちが通されたのは、2阶の奥の庭に面しただった。

10畳の座敷に、広い縁侧がついていた。

窓のには、入れのき届いた本庭园が広がっていた。

池には赤やの鲤が泳いでいた。

ゆいはさっきまでの惊きを忘れたように、窓に张り付いた。

「お父さん、鲤がいる!きい!」

案内してくれた配の居さんが、ゆいに笑いかけた。

「お嬢ちゃん、鲤に饵をあげてみますか?お庭までご案内しますよ」

居さんはそう言いながら、ちらりと彩佳を见た。

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彩佳がさく颔いた。

ゆいは「く!」と言って、居さんと绪に部をていった。

俺と彩佳に话をする时间を作ってくれたのだと分かった。

座卓を挟んで、俺と彩佳は向かいった。

居さんが淹れてくれたお茶から汤気がっていた。

どちらもをつけなかった。

彩佳は膝ので両をねた。

そして背筋を伸ばした。

あの10の夜と同じ座り方だった。

「全部话します。最まで闻いてくれる?」

俺は静かに颔いた。

彩佳の実は、创业150を超える老舗旅馆だった。

彩佳はそのの娘としてまれた。

父亲の桐正尾が今の当主で、母亲のかよが女将をしている。

彩佳はし俯いて语り始めた。

「さい顷から、いずれはおがこの旅馆を継ぐんだと言われて育ったの。お茶もおも习わされた。お客様へのお辞仪の角度まで父に直された」

父亲は厳しいだったという。

何よりも旅馆の名と信用を事にするだった。

彩佳が24歳の时、父亲の勧めで结婚した相が、の夫の凉介だった。

旅馆に酒を卸している会社の経営者の息子だった。

「最初は优しいだとった。父も、取引先の息子ならだと言ってんでた」

彩佳はをきつく握りしめた。

「ところが、ゆいがまれてしばらく経った顷から、の夫は変わっていったの。自分で始めた事业がくいかなくなると、かげつろうの名を使ってあちこちからおを集めようとした」

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彩佳の実の信用があれば、银も取引先もを贷す。

の夫はそう考えていたらしい。

「おの実なんだから、お父さんに言頼んでくれればいいだろうって、毎晩のように言われた。断ると、物に当たるようになった」

彩佳は膝ののをぎゅっと握りしめた。

「あのが见ていたのは私じゃなかった。私の実の板とおだった」

ゆいが3歳になった顷、彩佳は离婚を决めた。

このままではいつか、ゆいのでもっとひどいことが起きる。

ゆいを守るためには、别れるしかなかった。

离婚の话がまとまり、彩佳はゆいを连れて実に戻った。

けれど、父亲は娘を迎え入れなかった。

「父は私の话を最まで闻かずに、こう言ったの」

彩佳は目を闭じた。

「旅馆の评判に伤がつくじゃないかって」

取引先のとの离婚が町でどう噂されるか。

かげつろうの名がどう言われるか。

父亲が気にしたのはそのことばかりだった。

彩佳がどれほど苦しんでいたのか、分かろうとはしなかった。

「その晩、ゆいを连れてをたの」

彩佳は俺の目を见た。

「の时の友达が、かずやさんのんでいる町にいて、しばらく泊めてくれた。スーパーのパートもその友达が绍介してくれたの」

そして、俺と会った。

「かずやさんには、実が旅馆だってことだけは话した。でも、かげつろうの娘だってことは、どうしても言えなかった」

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