みかん小説
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"跡取りを産めぬと追われた嫁と、姑の漆塗りの小箱" 第6話

聖治郎はで笑った。

「そんな切れ、いくらでも作れよう」

そこへ、寺の職がみて、懐から控えを取りした。

「お常様より、この控えを預かっておりました。文面も印も、そちらの原本と相違ございません」

名主がつの証文を並べ、印の位置と文言をつずつ読みわせていく。座敷にはめくるの音だけが響いた。

読み終えた名主は顔をげ、静かに告げた。

「文面も印も相違なし。聖治郎、これ以の申しては認められないぞ」

聖治郎は言葉を失い、それ以何も言えなかった。おは証文を懐へ収めながら、指先の震えが収まるのを待った。

この枚のが、お常の最の遣いであったことを改めていらされる来事だった。

疑いはれたが、粕漬けの利益がい現実は変わらない。への帰り、おは帳面をい浮かべ、このままではお常から託されたまでしずつ減っていくと考えた。

粕漬けだけでは暮らしはたない。酒でにつけた発酵と蒸しの技を、何か別の形にかせないだろうか。

おのに浮かんだのは、酒種を使った饅だった。

その夜から、おはの仕込みを始めた。麦に酒種を混ぜ、加減を確かめながらこねげる。

晩寝かせたを翌朝に確かめ、せいろへ入れた。しかし、はうようには膨らんでいなかった。

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表面は固く縮み、割れ目からはほのかな酒のりだけが漂っている。

おはせいろを脇に置き、次はどこを直すべきか、のでいくつもの順を数え直し始めた。のでは、のたいが戸をさく鳴らしている。

せいろの蓋をけては失敗を繰り返すが続いた。が縮んだり、酸っぱくなりすぎたり、蒸しが甘くてまでが通っていなかったりと、うようにいかない。

おは酒種の量を変え、寝かせるのぬくもりを変え、蒸すののみを変え、幾度となく仕込み直した。

造り酒で覚えた麹の見てが、の発酵にもそのままきることに、おは改めて気づかされた。粕漬けを漬ける傍らで、酒種の瓶にも目を配る々だった。

の、粕漬けの商いを続けながら、夜ごとにと向きう々が続く。

の壁越しに、隣の子供が数えをう声を聞きながら、おはせいろの様子をじっと見守ることもあった。

銭を切り詰め、と酒種を買いすが幾晩も続いた。夜遅くまでを落とさぬよう、竈の炭も余分に用しておく必がある。

ある晩、をめに仕込んでみたが、翌朝取りすとまでが通らず、のままのが残っていた。おは失敗した饅をつ割り、断面を確かめてから次の仕込みに取りかかる。

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みを見直し、蒸すをわずかにくしてみた。

がけ、が溶け始めた頃、ようやくい描いていたにづいた。

おは豆を柔らかく炊き、貴な砂糖は控えめに使って餡を作った。その餡を酒種で発酵させたで包み、せいろへ並べる。

蓋をけると、い湯気と共にふっくらと膨らんだ酒饅が現れた。

指先で軽く押すと、すぐに弾き返してくる。割れ目からは、ほのかな酒のりがちった。

いの、数えきれないほど失敗をねた末に、ようやく辿り着いた形だった。

「これなら……」

おは蒸したての酒饅をつに取り、箱のに並べた。酒饅はつ文、つ包みで文とした。

粕漬けよりはかかるが、そのでべられる品なら、客も財布の紐を緩めやすいはずだ。

その、箱のを通りかかった郎が、湯気のつ饅に目を留めた。

「ほう、いい匂いだない」

郎は断りもなく饅をつ取ると、きなへ放り込んだ。次の瞬、げさに顔をしかめ、を押さえてびねる。

「あちち! あちち!」 「丈夫ですか? まだ蒸したてでいですよ」

おが慌てて言うと、郎はを押さえたまま罰が悪そうに笑った。

「いや、こいつはうまい。うますぎて、ついでっちまった」

郎のげさな声と振りに、通りがかりの参詣客が何事かとを止めた。

、と集まってきた客に、郎はに饅を勧める。

「ってみろ。

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