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"跡取りを産めぬと追われた嫁と、姑の漆塗りの小箱" 第7話

酒の匂いがしてべ応えもある。それでいて酔っ払う配はねえ」

集まった客のが恐る恐るに入れ、目を丸くした。

「本当だ。こいつは酒粕とは違うわいだね」

そので買い求める客がしずつ増えていった。

郎はそれから幾も、寺を訪れる参詣に酒饅の評判を語って聞かせた。最も、いい話ばかりをげさに広めるだけで、まだが並ぶほどではない。

それでもを追うごとに、箱のでを止める客の数は増えていった。

客がれずに通い続けたのは、郎のだけによるものではない。おが毎朝蒸し加減と甘さを定に保ち、同じを裏切らずにし続けたことが、何よりの信用となっていた。

客が増えるにつれ、おではが回らなくなり、所の女に頼んでせいろ番と売り子を伝ってもらうようになった。

それでも、を仕込む段取りだけは、おが自ら守り続けている。

ある、羽織袴の武の供の者が、参詣の帰りに酒饅を求めた。

「敷の若様の祝いに、何か目しいものをと探しておってな」

供の者はそう言うと、酒饅を包み買った。それを敷で振るったところ評判となり、改めて敷から使いの者が訪れ、祝い事に使うためまとまった数の注文を言いつけていった。

箱つだった商いは、いつしかさな構えへと形を変えていた。

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せいろの数も初めの頃の倍くに増えている。軒先には、郎が字の達者な寺の坊主に頼んでいてもらったという真しい札が懸かっていた。

『ご おの酒饅』

先には酒饅を求める客の列ができ始めていた。並ぶ客のには、以粕漬けを買いに来ていた顔馴染みの姿も見える。

おはせいろの煙の向こうから、その列を眺めた。造り酒を追われてからまだも経っていないことが、自分でも信じられないほどだった。

構えがきくなるにつれ、せいろを絶やさず焚き続けるための薪と炭が、以にも増して入用になった。

に使う炭の量は、粕漬けだけを商っていた頃の何倍にも膨らんでいる。所の炭から仕入れていた品は、値の割に燃えが悪く、蒸し加減に斑がることが度々あった。

せっかくえたの来が、炭の質つで崩れてしまうことに、おは苛ちを募らせていた。

郎に相談すると、町のはずれに炭を商う男がいると教えられた。佐吉といい、荷を引いて町々を回る寡黙な炭売りである。

の頃は半ば。親から譲り受けた炭商をで切り盛りしていた。

おが先に呼ぶと、佐吉は炭俵をいくつかろし、それぞれをいて見せた。荷にはきさの揃った炭が幾にも積まれている。

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「これは値は張るが持ちがいい。こっちはいががくる」 「い方は、せいろには向きませんか?」 「向かんとは言わん。ただ、加減を細かく見られるでなけりゃ勧めん」

佐吉は品物の良し悪しを隠さずそのままにした。く売りつけようとする様子も、いものを無理に勧める様子もない。

おは炭を取り、断面を確かめた。

「こちらをいただきます」 「おさん、い方でいいのか? い方でもしばらくは持つが」 「蒸し加減が狂うと、の信用に関わります。目先の値より、そちらを取ります」

佐吉はわずかに目を見いたが、それ以は何も言わず俵を担ぎ直した。

の朝、佐吉は約束通りの刻限に炭俵を先へ運んできた。おもまた、受け取ったそので決めた分だけ支払いを済ませる。

「掛け売りにはしねえので、そういう客はこっちも助かる」

佐吉はそれだけ言うと、荷を引いて帰っていった。

それから幾度か、同じやり取りが続いた。佐吉は決めたに違わず品物を届け、おも支払いのを違えたことは度もない。

のものいも、佐吉の荷は決まった刻限に先へ現れた。互いにくを語らぬまま、注文と受け渡しだけが静かに積みなっていく。

ある、佐吉はせいろの加減を見てぽつりと言った。

「この炭なら、もうし細く割った方がの回りがい」

「割り方まで、教えていただけるのですか?」

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