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"赤鬼教師が認めた禁断の解答" 第12話

私はただ、過の来事が綺麗に理されて、正解がつに決まっている世界に逃げ込みたかっただけかもしれない。現代の世界って、何が正解か分からないことばかりじゃない。関係も、将来のことも、正解の選択肢なんてどこにもいてない。でも、歴史のテストなら、ちゃんとつの正解が用されてるから……」

葵の指先が、制のスカートのをきゅっと掴んだ。 「でも、本当は歴史だって、正解なんてなかったのよね。信だって、秀だって、秀吉だって、誰も正解なんて分からないまま、その瞬その瞬を必にきて、もがいて、選択してきたんだものね。……私、学へったら、ちゃんとのとしての歴史を勉してみたい。教科の活字の裏側にあった、彼らの体温を調べるような研究がしてみたいの」

蓮は横目で葵を見つめた。 かりに照らされた彼女の横顔は、迷いながらも、をしっかりと見据えていた。それは、自分と同じように完全で、へのを抱えながら、それでも歩を踏みそうとしているの女の、気く美しい姿だった。

「いいじゃん、それ」 蓮は笑った。 「おが歴史学者になったらさ、俺のあの答案、論文の注釈に引用してくれよ。『〇〇代の某による、信の初における理言語学考察』とか言ってさ」

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「誰がくか、そんなふざけた論文!」 葵がぷっと吹きし、蓮の肩を突いた。 「でも……そうね。もし私が教授になったら、試験問題に絶対してあげるわ。『本能寺の変において、信が最初に発したと考えられる理音声について論ぜよ』ってね」

「それ、絶対全国の受験がパニックになるやつじゃん!」

の笑い声が、夜のロータリーに響き渡った。 の通過をらせるアナウンスが微かに聞こえ、はゆっくりと、い夜の眠りへと沈み込んでいく。

パンをべ終え、袋をさく丸めてゴミ箱に捨てると、はちがった。 駅の改札へと続く階段の。ここが、の通学の分岐点だった。蓮は自転での宅へ、葵はに乗ってつ隣の駅へと帰る。

「じゃあな、葵。遅くまで付きわせちゃって悪かったな」

「ううん。……楽しかった」 葵はカバンの肩紐を握り直し、改札へと数歩んでから、くるりと蓮の方へ向き直った。 その顔には、今夜番の、柔らかく澄み切った笑顔が浮かんでいた。

「蓮」

「ん?」

「諦めないでね」

「え?」

「歴史の勉も……その、信が『えっ』って言ったっていう、あんたのその性も。絶対に、誰にも曲げさせないでね」

蓮は瞬目を見張り、それから胸ポケットにを当てた。そこには、あの巨な赤バツのついた答案用が、今も蓮の臓の鼓を確かに受け止めていた。

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「……おう。絶対に曲げないよ」

「うん。じゃあね、また。学で」

葵はさくを振り、自改札に定期券をタッチして通り抜けていった。ピッという子音が鳴り、彼女のろ姿が階段のへと吸い込まれていく。蓮はその姿が完全に見えなくなるまで見送り、それから踵を返して駐輪へと歩きした。

自転の鍵をけ、サドルに跨る。 ペダルを踏み込むと、たい夜が正面から蓮の体を突き抜けていった。 商を抜け、暗い宅の坂を駆けがっていく。ペダルを漕ぐに力を込めるたび、太ももの筋肉がく脈打ち、臓がトクトクと確かなリズムを刻む。

きている。 今、自分は確かにこの世界にきて、呼吸をして、ペダルを漕いでいる。 百のあの夜、信もまた、燃え盛る炎ので必に呼吸をし、その命を燃やし尽くそうとしていたのだ。きるということは、理尽に驚き、裏切りにちすくみ、それでもなお運命を受け入れてへむということなのだ。

夜空を見げると、の平線から昇ってきた々が、まるでい過から届いた無数ののように、静かに瞬いていた。

「……ま、そりゃ言うよな」

蓮は夜のに向かって、誰に聞かせるでもなくもう度だけ呟いた。

「『えっ』くらい、だもの」

の漕ぐ自転のタイヤが、乾いたアスファルトを力く蹴りばし、の灯りが織りなすののへと、軽やかに吸い込まれていった。

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