年末の新幹線は、いつも以上に賑やかだった。大勢の人々がふるさとへ帰るために、または旅行に出かけるために駅に集まっていた。私もその一人で、混雑を予想して指定席をしっかりと予約していた。旅の途中で立ちっぱなしになることは避けたかったからだ。
改札を通過し、プラットフォームに到着すると、すでに大勢の人々が新幹線の到着を待っていた。人の波をかき分け、ようやく指定された車両にたどり着いた。車内に入り、自分の座席を確認すると、そこにはすでに若い父親と小さな子供が座って眠っていた。
「すみません、ここは私の指定席なんですが」と静かに声をかけると、父親は顔を上げ、少し困惑した様子でこちらを見た。
「え?自由席ですよね?」と彼は言った。
私は少し驚きながらも、事前に確保した指定席のチケットを取り出して見せた。「いえ、ここは指定席です。こちらがそのチケットです」と言うと、彼はため息をつきながら言った。
「でも、子供が寝ているんですよ…」
その言葉に一瞬たじろいだが、私は心を鬼にすることに決めた。だって、私だって立ったまま長時間の移動をしたくないのだから。
「申し訳ないですが、私も指定席の料金を払っていますので」と毅然とした態度で告げると、父親は困惑しながらも、渋々子供を起こして別の席を探しに行った。
私はホッと胸を撫で下ろし、席に座って荷物を整理した。列車が発車する直前、ふと通路を振り返ると、あの親子が再びこちらに戻ってきていた。
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